野球グラブ(グローブ)を選ぶ時の基礎知識。硬式も軟式も必須の情報です。
野球やソフトボールのグラブ(グローブ)を購入する時、知っておくと役に立つ基礎知識を解説
硬式にしろ、軟式にしろ、ソフトボールにしろ、お店やネットショップでグラブ(グローブ)を選ぶ時、何を基準に選んでいますでしょうか?
内野手用や外野手用などの守備位置で選んだり、カラーや見た目のかっこよさ、好きなメーカーなどいろいろな要素がありますが、今回は守備位置によるグラブのコンセプトやグラブを構成するパーツの役割などをご説明して、グラブ選びのヒントにしていただければと思います。
(1)ポジションごとのグラブの役割
投手や内野手など同じグラブやミットでも役割が違います。その役割を再確認します。
■投手用グラブ
投手用は投げるためのグラブで、野手の一人ではありますが、それほど守備機会もないので、軽く、硬いグラブが必要となります。
またボールの握りが見えてしまうと球種がバレてしまうので、バスケット(フラット系)ウェブのようなボールが見えにくいウェブにすることがほとんどです。
指カバーも投手用の特徴で、人差し指を出すとその指の動きで球種がバレるので、カバーをつけています。
■内野手用グラブ
内野手用は捕球するためのグラブですので、手のような柔軟性が必要になります。打球の横(左右)の動きに主に対応するグラブです。
セカンドは捕球から送球までを素早く対応するためにポケットが浅く小さめのグラブが多く、サードは強烈な打球も捕球する必要があるためポケットが深めのグラブが多いです。
ショートはセカンドとサードの中間なので素早い連携も強い打球も対応できる小ぶりながらポケットが深めのグラブがいいです。
ただ最近では送球スピードを重視するよりも「しっかり掴む」ことを重視するプレイヤーも多くいるので、セカンドだから小さいグラブというような固定観念は必要なく、あくまで自分が使いやすいグラブがいいと思います。
■外野手用グラブ
外野手用も捕球するためのグラブですので、手のような柔軟性が必要になりますが、内野手用とは違い打球の縦(上下)の動きに対応するグラブです。
大きなフライをキャッチしたりするためにグラブ自体が大きく長い傾向があります。
また外野まできたゴロなどを内野へ送球するために、ゴロをキャッチしやすくなっています。
ウェブはフライの捕球時のショックを和らげるためにショックを吸収するようなウェブにすることが多いです。
■ミット(キャッチャーミット・ファーストミット)
キャッチャーミットもファーストミットも投手や内野手からの送球を一番多く捕球するので、とにかく軽くて耐久性が高いものが必要になります。
強さを求められるので、芯材も丈夫な化繊で和牛の皮革を使う場合もあります。
(2)革の種類
野球のグラブに使われる革は、キップレザー・ステアハイド・和牛が多く使われています。
その他、あまりグラブには使われないタイプの革もありますので、一通りご説明します。
最初に、「皮」と「革」の違いをご説明します。
●皮:加工される前の原皮
●革:なめし等の加工を施されたもの(シューズ、グラブ、バッグなどになります)
▶ハラコ(グラブでは使われない)
胎児から生後間もない仔牛の革。出産前に死んだ雌牛のお腹にいた仔牛(腹子)から採れることが多いく、ほとんど出回らない。現在は10kgまでの仔牛を含めることもある。
▶ベビーカーフ(グラブでは使われない)
タンニンなめしで加工された、胎児-生後3ヶ月までの仔牛の革。
▶カーフ(グラブでは、ほとんど使われない)
生後約6ヶ月までの仔牛からできる革。仔牛なので傷が少なく、しなやかで高級品の革。
▶キップ(グラブで使われる)
生後6ヶ月-2年程度までの牛からできる革。
キメが細かく繊維が柔らかいので、しっとりとした風合いで軽量なグラブができますが、耐久性はあまりありません。
キップのグラブは大事にメンテナンスしながら使うといいのですが、使い込むほどにヘタってきたりします。
▶ステアハイド(グラブで非常によく使われる)
生後2年以上経過した去勢された雄牛からできる、最も一般的な革。
野球用のグラブで一番使われており、表面に傷も多いのですが、キップよりも耐久性があります。国内メーカーのグラブはテキサス産が多いです。
グラブに使われるステアハイドの革の厚みは2.0mm〜2.4mm。
▶カウハウド(グラブでたまに使われる)
出産経験があり、生後2年程度経過している雌牛からできる革。一般的にステアハイドより薄く、柔らかい。
▶ブル(グラブでは、ほとんど使われない)
去勢されずに育ち、生後3年以上経過した雄牛からできる革。分厚く強度がある。
▶内地物[和牛など](ミットで使われることが多い)
国内で消費された牛からできる内地原皮を加工した革。
和牛(肉牛)、ホルスタイン(乳牛・去勢牛)などがあります。
和牛はミットで使われることが多く、国内のため鮮度が高く耐久性があります。
運動量が豊富なため、繊維が強く薄くできるためミットなどではいい音が鳴ります。
独自のグローブ用素材(ウィルソン:スーパースキン)
天然皮革ではないのですが、ウィルソンのグラブで使われている「スーパースキン」という人工皮革の素材があります。
バスケットボールの表革にも使われている素材で、天然皮革の短所を補った素材です。
特徴として、
・高野連認可済み(ブラックのみ)
・軽量
・牛革より耐久性がある(摩擦に強い)
・水分を含まず、重くなりにくい。
・汚れが浸透せず、簡単にとれる。
・へたりが軽減され、指の強化につながる。
短所としては、やはり天然皮革ではないので使い込んだときの革独特の風合いは出ないです。
ただメジャー選手の多くも使用していますので、素材はメンテナンスも楽ですしおすすめです。
(3)芯材と芯とじ
芯材と芯とじについてご説明します。
芯材は上記の画像の白い部分、グラブの指になるところに硬式グラブだと化繊やウールなどの素材が使われます。
硬式用の方が芯はしっかりして硬いです。軟式用は柔らかめ素材などを使用します。
硬式グラブの芯材に関しては
●化繊:軽くて硬い。軽さを求める投手ピッチャー用やミットに使われることが多いです。
●ウール:ねじれに強く、革との相性がいいので野手(内野手・外野手)用に使われます。
芯とじについて
よく質問されるのですが、土手部分の芯とじに関して「順とじ」「逆とじ」「縦とじ」と大きく分けられるのですが、それぞれの特徴を説明します。
▶順とじ
順とじは比較的、小指側の4本指で掴む型に適しています。
そのためポケット位置が、ウェブ下方向にできやすくなります。
順とじだからポケットが深くなる訳ではありません。オーソドックスタイプですね。
投手、内野手、外野手に適しています。悩んだ場合は順とじにしておけばとりあえず大丈夫です。
▶逆とじ
逆とじは順とじと逆方向に土手部分をとじています。
ポケット位置がより小指側になるので、ポケットを広く使えます。また開きやすいグラブになるので、内野手で素早い送球を目指したり、いわゆる「当てどり」用のグラブに適しています。
グラブがよく開くようになるので、内野手用に適しています。
▶縦とじ
縦とじは一般的に親指から小指まで土手を経由してつながった芯なので土手がしっかりとして、縦方向に使いやすくなります。
ピッチャーや外野手に向いています。
(4)ハミダシ
ハミダシはグラブの指部分にあるパーツで、もともとグラブの背骨代わりになるパーツです。
種類としては「切りハミ」と「玉ハミ」があります。
▶切ハミ
革を切りっぱなしにしたようにハミダシを形成することから、切ハミと言います。
耐久性があり、野球グラブの多くは切ハミです。
▶玉ハミ
革を薄くし、背中を丸め玉に似せたようにハミダシを形成するので、玉ハミと言います。
耐久性は切ハミよりも劣ります。
カラーによるハミダシが可能なので、非常にキレイにさらにオーダーグラブであれば様々なカラー・デザイングラブを楽しめます。
高校野球の場合、ハミダシには道具規則があります。
※投手用・野手用に関係なく、はみだしは本体と同系色または皮の自然色のみ使用可能。玉はみの場合は本体と同色のみ使用可能。
切ハミなら問題なく高校野球や学生野球、大学野球などで使えます。玉ハミの場合は本体同色じゃないと高校野球では使えませんのでご注意ください。
(5)背面紐
最近のグラブには「背面紐」があるものがあります。
背面紐は、手の動作に合わせながら、指先を強化するためのパーツです。
背面紐の通し方などは各メーカーで少し違います。
▶投手用(人差し指から薬指まで)
小指を独立させることで、グラブに力が入りやすくなります。
ボール、手首をしっかり隠すことができます。
グラブの指の隙間からボールが見えないので球種がバレにくいです。
▶内野手用(中指から小指まで)
人差し指を独立させることで、広いポケットが形成でき、中指から小指をしっかりさせることができます。
▶外野手用(人差し指から小指まで)
指全体に一体感を持たせることで、球際に負けない外野手用グラブとなります。
(6)受球面補強
硬式、軟式に限らず現在の野球用グラブは捕球面の革の下に補強用の革を埋め込んでいるタイプがあります。
耐久性の向上と受球面のハリを維持するためです。
ゼットやアシックス、ウィルソン(Wパーム)、ローリングス(デュアルパームテック)などあります。
長く使うグラブで、捕球面はいつもボールを受けてへたりやすいので、補強パーツがある方がおすすめです。
(7)ウェブの特性
グラブのウェブはもともと、片手でボールを捕球できるようにするために考案されたのですが、現在では機能性+デザイン性に富んだ多くのウェブがあり、カラー以外にデザイン要素の少ないグラブにとって重要なパーツになっています。
このウェブデザインがかっこいい!
という理由で守備位置等に関係なく選んでしまうと、後で後悔してしまうので簡単にご説明します。
ウェブの基本形は4種類
今では多くの種類がある野球グラブのウェブですが、実は基本となるウェブは4種類しかありません。
その4種類にデザイン性や機能性をプラスしていき数多くのウェブが生まれました。
その基本となる4種類をご説明します。
(1)バスケット系ウェブ
まずはバスケット系のウェブ。
ウエブの周りに紐通しの「耳」が付いているタイプです。
このバスケットウェブは投手などに使われるフラット系からフラットにデザインをプラスしたタイプ、オールラウンドグラブなどに使われるネット系などいろいろなタイプがあります。
投手と内野手向けのウェブになります。
(2)トンボ系ウェブ
こちらも定番のトンボウェブ。クロスになっているタイプです。
内野手はシングルトンボ(クロスタイプ)、外野手はダブルトンボなどがあります。
構造が非常にシンプルなので、丈夫で修理が簡単なウェブです。
(3)Hベルト系ウェブ
英語の「H」を横にしたデザインのため、HベルトウェブやHウェブと呼ばれています。
内野手用のグラブと相性バツグン。
(4)レーシング系ウェブ
レーシング系ウェブは、アミアミウェブとも呼ばれております。
ほぼ外野手用のグラブに使われ、ボールの上下の動きに対応したウェブです。フライなどのショックも吸収してくれます。
上記4種類のウェブが基本で、あとはデザインだったり紐(レース)の数や太さが違ったりなので、お好みで選んでいただいていいと思います。
▶バスケット(フラット)系ウェブ(投手用)
投手専用のバスケット(フラット)ウェブ。投球時に球種がバレないように、ボールや手首が見えないようにしています。
各メーカーではウェブ外側を独自のデザインにして、個性を出しています。
ウェブ自体にあまりクッション性がないので、投手以外にはおすすめしません。
▶バスケットウェブ(内野手用・投手用)
ウェブがバスケットのように編み込まれており、昔からあるウェブです。
ボールが見えないので、投手用としても内野手用としても使えるオールラウンドウェブです。
西武ライオンズの源田選手がこのバスケットタイプのウェブを使用しています。
耐久性とクッション性を併せ持つ定番ウェブ。
▶トンボ(クロス)系ウェブ(内野手用)
こちらも昔からある定番ウェブのトンボ(クロス)系ウェブ。
パーツが少ないので、柔らかく使えて修理も簡単です。
シンプルイズベスト!
広島の菊池選手の影響か、セカンドの選手に人気ですね。
▶Hベルトウェブ(内野手用)
ウェブの形が「H」に似ているので、Hウェブと呼ばれています。
ポケットが浅めのグラブに相性が良く、セカンド・ショートの送球を速くしたい選手に人気。
レース(紐)の本数を多くしたりして、強度を上げたタイプの派生ウェブもあります。
▶ネットウェブ(内野手用・投手用)
ネット系ウェブはレース(紐)の数も多く、強度があり衝撃吸収性もあるので、ショートの選手やオールラウンド的に使うのに適したウェブです。
ボールも見えにくいので、「投手も野手の一人!」ということで、フィールディングも重視するピッチャーなどにもおすすめです。
▶レーシングウェブ(外野手用)
外野手用のアミアミウェブ。
衝撃吸収性も高く、グラブの開閉もしやすいウェブです。
レジェンドのイチロー選手もレーシングウェブタイプを使用していました。
レースの編み込みやパーツの違いで、派生タイプが多くあります。
▶ダブルトンボウェブ(外野手用)
外野手用からもう一つ。ダブルトンボタイプのウェブをご紹介。
今は先に紹介しましたレーシングタイプが外野手用としては多いのですが、ダブルトンボのメリットとして、紐が少ないので丈夫で長持ち。
受球面やポケットも崩れにくい特徴があります。
修理も楽です。
ボールが先端方向にこぼれそうになっても、ダブルトンボにひっかかって残ってくれることもあります。
(8)親指かけ・小指かけ
親指かけと小指かけは、それぞれの指をしっかりと固定してグラブに指の力が伝わりやすくします。
このフィット感は自分の好みに合わせて調整する必要があります。
たまに紐をほどいてフリーにしている選手がいますが、高校生の場合、結ばないと注意を受けます。
(9)平裏(グラブの手入れ部分)
平裏とは、実際に手を入れる部分の革のことです。裏革という言い方もします。
この部分に感謝の気持ちや意気込みなどを刺繍する選手も多くいますね。
平裏のパーツ(革)は大きく分けて3種類あります。
▶共革(表の革と同じ素材)
表の革と同じ素材を使ったタイプで、グラブでは最も一般的。
オーダーであれば素材は同じですが、革のカラーなどは変更できることが多いです。
定番品のグラブはほとんど「共革」。
実はグラブにはめた手と受球面の距離が一番近いのが共革なので、手との一体感がありさらに耐久性もいいので、一番のおすすめです。
平裏で迷ったら共革がベストです。
▶ディアスキン(鹿革)
鹿革を使用した平裏で、非常にしっとりとした感触の高級品。
手触りなどは共革よりいいのですが、強度は共革よりないので、使い込むにつれて汚れやヘタリが出てきます。
▶ソフト系レザー
各メーカーで※※ソフトレザーなどとネーミングされている、ソフト加工された平裏です。
手触りなどはいいのですが、共革に加工して柔らかくしているので、どうしても耐久性や強度が落ちてしまいます。
※守備手袋の着用をおすすめします。
最近では守備用の手袋を着用してプレーする選手も多くなりました。
グラブを長持ちさせるためにも守備用手袋の着用はおすすめです。
素手でグラブを使うメリットもありますが、守備手袋をすることにより汗や汚れからグラブを守ることができます。
最近では手のひらにクッション素材を用いたタイプもあるので、衝撃緩和にもなります。
何と言っても、守備手袋は洗濯できますが、グラブは洗えませんので。
ただピッチャーは守備手袋やリストバンドなど着用できないので、注意してください!
最後に
今回は野球グラブを選ぶ時の基礎知識を記事にしてみました。
野球グラブのパーツにはそれぞれ役割やコンセプトがあり、デザイン性やカラーなどの見た目も重要ですが、それだけでグラブを選んでしまうと本当に合うグラブと巡り合うことができない場合があります。
今回の記事の情報を少しでも入れておけば、グラブ選びの際の間違いが減らせると思います。
また野球専門店スタッフであれば、この基礎知識プラスαがあるので、来店して聞いてみたり、ネットで問い合わせしてみたりするのもアリですね。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません